研究会を終えて



 この度、2017年6月17日(土)に「第31回日本小児ストーマ・排泄・創傷管理研究会」を横浜市日吉にて開催させていただきました。当日は240名のご参加をいただき、一般演題、ランチョンセミナー、委員会報告、シンポジウム、企業展示、全てのプログラムを遅延なくスケジュール通りに無事終了することができました。まずは、ご参加いただいた皆さま、座長・シンポジストの労をお執りいただいた先生方、ランチョンセミナー・企業展示・広告・寄付金などにご協賛いただいた多くの企業・団体さま、運営にご協力いただいた研究会事務局、アシステ・ジャパン、そして教室スタッフの皆さまに厚く御礼申し上げます。

 一般演題は、ご応募いただいた40演題を「創傷・スキンケア」「排泄管理・指導」「自立支援」「瘻孔関連」「尿失禁・尿路変向術」「ストーマ造設・外科手術」の6つのセッションに分けて発表・質疑応答を行い、それぞれ大変活発な討論が行われました。例年、進行の遅延が懸念されておりましたので、今回は先に2〜4演題を発表していただき、その後まとめて質疑応答する集団討論方式としました。すべてのセッションがほぼスケジュール通りに進行し、定刻通りに閉会することができました。一方、この方式ですと、一部の演題に質疑が集中してしまう可能性がありますが、応募された演題を全て採用している実情から、討論の場ではある程度のselectionがかかるのは致し方ないと考えました。

 今回5年ぶりに泌尿器科で主催させていただくことから泌尿器科らしいトピックスとしての「この際、ウロを極めよう!」と、「この際、小児のスキンケアを極めよう!」をテーマとして2つのランチョンセミナーを企画しました。両セミナーとも、普段臨床の場で感じている質問・疑問を事前に募り、その内容にお答えできるような講演としました。両会場とも100名以上のご参加をいただきました。特に、低出生体重児を含めた小児のスキンケアに対する要望が予想以上に強く、結果的に座席数が不足してしまい受講希望の方には大変ご迷惑をおかけすることになりました。

 本研究会のメインテーマである「成長とともに!患児の自立と社会との関わり」についてのシンポジウムを行いました。計6名のシンポジストと指定発言により、医療者の立場からは自立に向けた外科的治療法とチーム医療の重要性を、養護教諭の立場から適切な学校の選択、双方向性のコミュニケーション、医療サイドとの連携の重要性を、ソーシャルワーカーの立場からは本邦における申請主義の社会保障の現状と早期活用の重要性を、患者さんの立場から排泄障害が人生に及ぼす影響への切実な想いを、さらに、理解し合える仲間が集う患者会の意義と実際の運営や課題についてご発表・発言をいただき、医療面のみならず社会生活での問題点やその解決への方向性が討議されました。

 私なりに咀嚼・解釈させていただきますと、患児の自立と社会との関わりにおいて、まずは患児の立場・目線で考えなければならないことは言うまでもありませんが、特に中沢澄子先生(新宿区立新宿養護学校)が示された「自立に向けた3ヶ条(患児の立場から)」が大変印象的でした。

 1) 自分の病気を理解する。
 2) 自分を守るために何をしたらよいか知る。
 3) 自分の気持ちを伝えられる。

 1)に関しては、正に医療者が提供しなければならないことです。2)についても病気から守ってあげるのは医療者の務めです。また、就学以降生活時間の大半を過ごす学校の場では教諭がその大きな役割を担うことになります。そのためには適切な学校選択とこどものことを知る上で医療者との連携が必要になります。さらに各ライフステージにおいて社会から守ってあげる(社会保障)には、社会福祉の専門家であるソーシャルワーカーの関与が必要不可欠です。一方、3)に関しては、そのような場所や環境を整えてあげることについて今まであまり議論されてこなかったように思います。今回、同じ境遇のこどもたちが自分の気持ちを伝えられる場として患者会の存在とその意義が改めて紹介されました。これによって救われた患児の事例についても提示されました。もちろん、これは一つの有効な術ではありますが、目的ではありませんし、患者会を発足することですべてが解決するわけでもありません。また、実際の運営や維持にはさまざまな課題があることも述べられました。本来は、患児にとってもっと身近な家庭、通院する医療機関、通学する学校が自分の気持ちを伝えられる場となるべきだと思います。我々医療者も、診療・ケアを限られた時間で行わなければならないのが実情ですが、この患児が抱える心の問題にもっと真摯に向き合うべきだと痛感しました。

 企業展示には計10企業・団体が出展されました。参加者へ最新の医療機器・装具、そして開催地横浜をアピールさせていただくよいコミュニケーションの場になったものと考えています。

 今回、参加者の方には受付時に所属施設、職種、会員の有無、前日まで開催されたセミナーへの参加の有無などについてお答えいただき、その動向を知ることができました。また、会期中には歴代の会長を務められた先生方からもいろいろなご意見やご指導もいただきました。この研究会の目的の一つである「小児ストーマ・排泄・創傷管理の向上と普及」のためにも今後の重要な糧になるものと考えております。

 ご参加ならびにご協力いただきました皆さまに改めて深く感謝申し上げます。


2017年6月吉日



 2017年6月吉日